ストレートネック/原因としてむち打ちとか進化とか

つい最近まで、人間の頚椎は横から見ると前凸のカーブをしていました。これを頚椎の前弯と言います。

この地球に人が誕生してから現代まで、厳しい環境の変化に適応するように生き、その種を保存するために必要な形を獲得してきました。人間の頚椎前弯もその獲得形質したものの一つでした。

ストレートネックの原因/生活環境の変化

ところが近年人間の頚に変化が見られるようになりました。そうです。タイトルにあるようにストレートネックになってきたのです。

その要因の一つとして、生活様式の変化が挙げられます。元々頚椎前弯は遠くを見るのに適した形ですが、現代では生活の中であまり遠くを見るような機会はなく、パソコンや携帯、PDA等の影響により、下向きの姿勢を多くとるようになりました。

これにより実際にはストレートネックを通り越し、上部頚椎で後弯化しつつ下部頚椎で前弯を維持しているようなコンビネーションネックや、頚椎全体が後弯化するようなミリタリーネックなどが多く見られます。

当方も整形外科勤務時代に何千枚ものレントゲン写真を見てきましたが、キレイな頚椎前弯を維持した方は稀でした。もちろん頚椎や肩のハリなどを訴えて来院されるわけですから、頚椎前弯を崩していてもおかしくないと言えばその通りでなのですが、それをふまえても尚頚椎前弯消失率の高さには驚きを隠せませんでした。

当時に自分の触診感覚の修正を余儀なくされました。整形外科に勤務するまでは、触診による感覚のみで頚椎の湾曲、歪みなどを判断していました。その際当然学校や本で教えられたように人間の頚椎は前弯しているものとの前提、思い込みのもとに、触診で得られるはずの頚椎前弯消失の感覚を脳内変換、マスキングしていたのです。

進化の代償⇒痛み

頚椎前弯消失も進化の過程と考える事が出来ますが、人間はこれまでなが~い期間を費やして頚椎前弯を獲得してきたわけですから、近年の急激な変化に身体は悲鳴をあげる事になります。

その代表的なものが肩こりや頚の痛みです。更には「頭痛の種」で書いたように、頚椎前弯消失は神経系を介して三叉神経、大小後頭神経へのwind up要因にもなっているようですし、意外かもしれませんが顎関節の開口制限にも確実に関与しております。

過去の交通事故が原因の場合も

これらストレートネック、コンビネーションネック、ミリタリーネックですが、時間をかけて作られて行くケースもあれば、瞬間的に作られてしまう場合もあります。

それが交通事故などの際におこるむち打ちです。最近の車はヘッドレストが装備されていますので、頚を伸展する事による障害はあまり考慮しなくても良いかもしれませんが、シートベルトによる身体の固定によって、頭が前に振り出され頚椎が瞬間的に強く屈曲します。これにより頚椎前弯の中心である頚椎5番を後方変位してしまい、結果として前弯が消失してしまうのです。

この一連の流れをマックのストローを使って動画で説明してみました。

見事に前弯消失しています。肩こりや頭痛でお悩みの方は、機会があればレントゲン写真を撮ってみて下さい。既にあなたの生理的前弯は維持されていないかもしれませんよ。

レントゲンによるストレートネックの分析

例として以前来院されていた方の写真でご説明します。これは横からの頚椎レントゲン写真です。

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見事にストレートネックをされているのが解かるかと思います。頚椎2番(首の上から2番目の骨)から6番までの椎体下面に赤いラインを引いてみました。通常の弯曲であればこの赤ラインは後方で1点に収束します。ところが4/5番と5/6番で後方が開くような角度になっています。3/4番はまだ生理的前弯を維持しようと頑張っていますね。2/3番もほぼ平行線ですのであまり良い状態ではありません。

椎体前面には縦に赤ラインを引いてみました。ストレートなのが一目瞭然なのですが、4、5番が若干赤ラインよりも後方に位置しているのが見てとれます。また椎体後面に緑ラインを引くと、5/6番でキンクと言う折れ曲がったような状態が見て取れます。

次に屈曲して撮影して頂きました。

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通常ならば各椎骨間が均等に屈曲して行くのですが、5/6番のキンク箇所メインで折れ曲がるように屈曲しているのが解かります。また3/4番は中間位と比較して後方が開いてますので、この椎骨間は屈曲の可動性を有しているのが解かります。ここで問題となるのは1/2番、2/3番で、中間位と角度の差が殆どありません。屈曲に関する可動性が失われています。

次に伸展位です。

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3/4番間は優秀で、屈曲、伸展ともに可動性を確認できます。棘突起間(水色ライン)を中間位と比較すると、他の椎骨間も可動性を確認できるのですが、1/2番、2/3番、5/6番は伸展の可動性が少ないです。

ストレートネック治療の一例

これらの事から、この方は頚椎1/2番、2/3番、5/6番の可動性回復をはかる施術をし、それによって中間位の4/5番が戻らないようであれば、4番にも施術をする必要があると言う施術計画になります。

これは一例です。問題のある箇所は十人十色。施術プランも十人十色となります。


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